039371 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

花ごよみ

花ごよみ

4

月と 風と たんぽぽの おはなし

バー

男は 娘の変わり果てたすがたに がく然としました
何をしてやることも出来ない自分がもどかしく
泣くようなうなりをひとつあげて 娘をかき抱きました

すると
どうでしょう

糸の様に軽くなった 娘のからだは
ふわりと 何の苦もなく 風に抱き上げられたのです

男は
そのまま 世界中を駆け巡り
その先々に 綿毛をおろしてゆきました


こうして 娘は
世界中に 目をもつことができました

男が どこにいても
その姿を見ていられましたし
綿毛にすがたをかえれば
風の通り道を ついてゆくことも
できるようになったのです

わたげ

むかし むかし ずっと むかし
まだ 月のまほうが 人々に効いたころの
ちいさな ちいさな おはなし



~おしまい~



© Rakuten Group, Inc.